ありのままで生きていけたらいいよね。− Goodbye Happinessとくま

宇多田ヒカルが、先日出演したNHK WORLD JAPANの番組「SONGS OF TOKYO」で村上信吾さんからありのままの宇多田さんを感じた、と言われてこう答えた。

「ずっとありのままのつもりではいたんですけど、自分で思うありのままの自分が多分分かってなくて。そこが一致し始めたからもっと直で分かりやすく、ありのままに感じてもらえるのかなって思います。」

無理に自分のことを分かろうとしないでここまで来た結果、ようやく自分のことが分かってきたのだと。今回のアルバムのテーマの一つが「自分自身との関係」であることは繰り返し語られているが、今のヒカルさんはごく自然に自分自身のことを俯瞰的に捉えている。

VOGUE JAPANのインタビューで語られたように、精神分析を続けている影響も大きいのだろう。自分の感情にフラットに接していて、それが歌詞にも現れている。

昨日出演したCDTVでは、「君に夢中」について「恋愛に夢中にもうなれない自分と、なってた頃の自分と、もうなれなくなってるけど話を聞いてみるとなりたがってる他人の気持ちも全部込みの、一歩引いたメタ的歌詞で不思議な歌だ」と紹介していた。確かに不思議。こんな構造のラブソングを作る人が他にいるだろうか。

このあたりが、「自分で思うありのままの自分が一致したこと」の現れなのだろうな、と。

 

そして、「ありのまま」と言えば、Goodbye Happinessの大サビを思い浮かべる。

ありのままで生きていけたらいいよね 大事な時もう一人の私が邪魔をするの

ミュージックビデオでは、この部分はくまちゃんの頭を取って笑顔のヒカルさんが出てくるシーンだ。これを見て何度泣いたことか。昨年のインスタライブでヒカルさんが「私もノンバイナリーだから」とプライドマンスを祝ったあとはこのシーンを何度も見て壊れていたのも思い出す。そもそもこのビデオは現状唯一の「宇多田光」監督作品であり、人間活動前最後のミュージックビデオだ。その点で、この映像作品は「自分自身との関係」というテーマの出発点でもあるとも見ることができるだろう。

 

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