警戒アラート

「警戒アラート」なる言葉が世間に定着して2年が過ぎた。この言葉、冷静に考えてかなり変じゃない?

これ、ずっと東京都の小池知事が生み出した「東京アラート」を神奈川県の黒岩知事が「神奈川警戒アラート」とアレンジしたのがきっかけで、気象庁が「熱中症警戒アラート」を出すようになったんだと思っていたが、どうも時系列は違うようだ。

 

2020年3月に、オリンピックなどに向けて今夏「警戒アラート」を環境省気象庁が試行するというニュースが出ている。おそらく、これがオフィシャルな「警戒アラート」初出だと思われ。

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2020年5月15日、東京都小池知事は会見で「東京アラート」の導入を明らかにする。この頃の小池さんはキレキレだった。「ステイホーム」「3密」を初め、小池はキャッチーな言葉を次々と生み出して見事に世間に定着させていた。そしてその勢いの中で「東京アラート」も生まれ、この頃はそれなりにテレビニュース等でも使われていたように記憶している。

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そして、2020年5月20日に、神奈川県黒岩知事が会見で「神奈川ビジョン」の一環として「神奈川警戒アラート」なるものを発表する。この時僕は「神奈川警戒アラート」という言葉の間抜けさに呆れた。黒岩のワードセンスは小池の足元にも及ばないな、と思った。

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この後で、「熱中症警戒アラート」が運用されることが大々的に宣伝されるようになったのだと思う。それで、「黒岩が生んだ変な言葉が浸透している」と驚いたものだ。

しかし「警戒アラート」生みの親はどうも気象庁のようだ、ということが今回分かった。それで気象庁の方を調べていると、2020年4月に出た "「熱中症警戒アラート(仮称)」(案)について" という資料に辿り着いた。熱中症対策に関するヒアリングの結果を紹介し、それを受けて警戒アラート(仮称)制度を導入することにしたということが述べられている。

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/shingikai/kentoukai/nettyusyou/part1/part1_shiryo2.pdf

これの2ページには「調査結果を踏まえ… 熱中症への警戒を一層効果的に呼びかけていくために、予防行動とセットにしたシンプルな警戒情報(アラート)を発信することとしてはどうか。」とある。そうそう、やっぱり警戒情報=アラートだよね。この部分は正しい。しかし、なぜかこれが「警戒アラート(仮称)」になってしまっている。警戒情報(アラート)という言い方が煩雑だと思った気象庁の誰かが、何も考えずに括弧と「情報」だけ外して「警戒アラート」とかいう変な言葉を作ってしまったのではないだろうか。そしてそれに誰も突っ込むことなく、とりあえず仮称は警戒アラートということになってしまったのではないか。

あるいは、英語圏で "Heat warning alert" が使われているっぽいので、とりあえずそれの直訳としての?「熱中症警戒アラート」が仮称となったのかも。

そんなこんなしているうちに、気象庁が仮称として用いていた「警戒アラート」を知ってか知らずしてか、黒岩が「神奈川警戒アラート」を運用し初める。その状況下で、気象庁の中の人は「警戒アラート」そのままでイケるじゃん、と思って「熱中症警戒アラート」が運用開始された、といったところだろうか。

僕は現時点では「警戒アラート」という言葉にはかなりの違和感を持っているのだが、今後もずっとこの言葉は生き残り続けて、「警戒アラート」に慣れ切ってしまうことになるんでしょうかね。