Distanceを抱きしめる

最近、大変今更ながら宇多田ヒカルの2ndアルバム「Distance」が自分の中で流行っている。もちろん今までも幾度となく聴いてきたアルバムなんだけど、最近になって電車に乗ってなんとなくイヤホンをした時とっさに選ぶ「今聴きたい宇多田ヒカル」に選ぶようになったな、という感じ。

そもそも、今年は年初から「BADモード」を聴きまくってきた。6月だったかに「Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios 2022」が配信リリースされた直後2週間くらいはそれしか聴いてなかった。そんなこんなしているうちに、アルバム「BADモード」が自分の中で「たった今の作品」から遠のきつつあり、徐々に他の曲も聴くようになってきている。

自分の中で「BADモード」モードが薄まっていることを実感したのは、肌寒くなった日の午後にふと「Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー」を聴いたとき。リリースされたあの頃はまだ寒くて「この夏合流したいね」という歌詞に希望を込めて聴いていたわけだが、もう季節が一周するんだな〜と気が早いながら思った。

 

そして「Distance」。そもそも、このアルバム自体「BADモード」と近い部分も多いと思っている。前作のタイトル「初恋」は1stアルバム「First Love」と韻を踏んでいる流れで、「BADモード」収録曲の「誰にも言わない」は「Can You Keep A Secret?」を、「君に夢中」は「Addicted To You」を、それぞれ意識したタイトルだと考えられる。他者との関係を歌うラブソングから内省的な歌詞へというアルバム全体を見たときの流れも似ている。

「Distance」頻出の単語の一つが「傷」。「癒せない傷なんてない」(Wait & See 〜リスク〜)、「傷つけさせてよ直してみせるよ」(For You) 等、どれも印象的。特に「タイム・リミット」の終盤に突如出てくる「傷つき易いままオトナになったっていいじゃないか」が大好き。

今オトナになった宇多田ヒカルが「傷つけられても自分のせいにしちゃう癖カッコ悪いからヤメ」(PINK BLOOD) と歌ってくれるのは本当にありがたい。

そして、そのヒカルさんが辿り着いた境地はFind Loveの 'I know it's somewhere in me, I'm just tryna find love' に代表されるように、「自分」そのもの。ああー、いつになったら辿り着けるのやら。