宇多田ヒカルと「証明」

宇多田ヒカル『君に夢中』、終盤に「来世でもきっと出会う 科学的にいつか証明される」という歌詞がある。この部分、始め聴いたとき "科学的" "証明" というワードが異質に感じて印象に残った。

この、今は「来世で出会うこと」を科学的に証明できないけれど、いつか証明されるだろうという一種の祈りには何となく共感できる。輪廻転生的な思想は宇多田ヒカルの歌詞全体に共通するテーマでもあり。「来世」の反対は「前世」。『ぼくはくま』には「ゼンセはきっとチョコレート」という歌詞が出てくる。ここは、漢字表記の"前世"にNHKからNGが出てカタカナで折衷したらしい。ぼくはくまの"ゼンセ"も、君に夢中の"証明"のように少し異質で印象に残る。

そして、他に"証明"が出てくるのは、「初恋」のアルバム曲の『残り香』。2番の歌い出しは「証明されてない物でも信じてみようと思ったのは 知らない街の小さな夜が終わる頃」。1番の同じメロディーには「壊れるはずがない物でも壊れることがあると知ったのは つい先程」という歌詞が当てられているが、ここでも"証明"とか"つい先程"とかの少しの違和感が心地よい。『残り香』は宇多田ヒカル失恋ソングの中でも、特に生々しいというか、情景が浮かびやすいものだろう。私はアルバム「初恋」の中で一番好きな曲がこれだが、この曲に抱いていたのが、まさに『君に夢中』が主題歌になっていたドラマ「最愛」の梨央と大輝のような関係だった、ような気がする。もちろん最愛を見た後だからそう思う部分もあるだろうけれど。地元で出会った二人が運命に引き剥がされ(「壊れるはずがない物でも〜」)、都会に出たあとにお互いを思う(「証明されてない物でも〜」)というイメージ。

他に"証明"関連の歌詞として思いつくのは、小袋成彬の『Lonely One feat. 宇多田ヒカル』の宇多田パートで物凄いメリスマ?付きで歌われる「ロジックだけでは導き出せぬ数式半ば 一人では辿り着けぬ景色がまだ僕らが大きくなるのを待っている」かな。ロジックだけでは導き出せぬ数式、というのは「証明されてない物」や「科学的にいつか証明される」に近いと思う。

 

 

(オチがなくてすみませんw)

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